馬油(ばーゆ)とは、馬の皮下脂肪を原料とした動物性の油です。古来から「皮膚の健康状態を維持する」ための薬として知られ、民間治療の薬として使用されてきました。
現代では医薬品として認められているわけではありませんが、馬油にはオレイン酸をはじめとした肌に有用な脂肪酸が多く含まれていることから、美容液として扱われるようになりました。
馬油の性質は人間の皮脂とよく似ているとされ、肌に馴染みやすく保湿効果が高いため、保湿クリームのように使用するのが基本です。
比較的簡単に手に入る油脂ですが、もともと食用にもなるような天然の油脂なので、腐敗しないよう取り扱いや保存方法には気を配る必要があります。
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馬油がイボを改善するって本当?
現存する最古の中国医学書にも「皮膚のひび割れを改善する薬」として掲載されている馬油。
馬油はそれほど昔から人々に使われてきた成分ですが、2010年代以降の日本では「イボの改善に効果がある」と言われるようになりました。長い馬油の歴史に比べれば、あまりにもにわかに湧き出したこの噂ですが、果たして本当に馬油にイボの改善効果などあるのでしょうか。
結論からいえば、馬油の効果は「イボの種類」によります。
イボの種類によっては馬油を使うことで改善に繋げることもできますが、間違ったイボに使うと状態が悪化してしまう恐れもあるため注意が必要です。
また、あくまで馬油は「スキンケア」の範囲で使うものであって、「治療薬」ではないということも頭に入れておきましょう。できてしまったイボを治すために使うというよりは、肌質を改善してイボができにくい肌環境を整えるというスタンスをとるのが最も賢明です。
馬油が効果を発揮するのは老人性イボだけ
日頃のスキンケアに馬油を使うことで、発生を抑えられる可能性があるのは「老人性イボ」と呼ばれるタイプのイボだけです。
それ以外のイボについては後述しますが、老人性イボ以外のイボに馬油を使うと悪化する恐れもあるので注意が必要です。ここでは老人性イボの特徴と、馬油が老人性イボの改善に繋がるメカニズムについて詳しく解説していきます。
老人性イボって?
老人性イボは別名「首イボ」とも呼ばれるもので、一般的に首まわりや顔など、皮膚が薄い部分にできやすいとされています。
名前からも察しがつくように、このイボは歳をとるほどに発生しやすくなることがわかっています。老人性イボは30代くらいから少しづつ発生しやすくなり、80代になる頃にはほとんどの人にできます。
老人性イボの原因は「肌のターンオーバーの乱れ」です。肌が紫外線や乾燥などでダメージを受けると、古い角質が落ちにくくなり、その下から新しい角質が押し上げる形でイボ状になってしまいます。
つまり、老人性イボは「古い角質の塊」ということになります。
どうして馬油が老人性イボに効くのか
馬油が老人性イボに与える効果のなかで最も有効なのが「保湿効果」でしょう。人間の皮脂に近い成分をもつ馬油は非常に肌に馴染みやすく、下手な化粧水よりもよっぽど肌に浸透すると言われています。
肌に必要な水分を補給しつつ、肌の表面には油膜を作ってくれるので浸透した水分が蒸発してしまうのを自動的に防ぎます。実は、老人性イボが増える最大の原因のひとつといわれているのが「乾燥」なのです。
肌の水分量が不足するとターンオーバーが乱れて老人性イボの発生リスクが高まってしまうため、乾燥肌の人が老人性イボを防ぐにはまず「保湿」に気をつかう必要があるのです。
日頃のスキンケアに馬油を使えば、とても効率的に肌の給水・保湿を行うことが可能になります。また、馬油には肌のターンオーバーを促進する成分も含まれています。
特筆すべきは「若さの脂肪酸」の別称をもつ「パルミトレイン酸」が多く含まれていることでしょう。その他、馬油には抗酸化作用・抗菌作用・抗炎症作用など、老人性イボの発生と間接的に関わる原因を潰す効果が多く備わっているのです。
関連記事顔や首の老人性イボを自宅で除去|どの治療法が一番綺麗に取れる?
馬油を使っても全く意味がないイボ
老人性イボ以外のイボには、馬油を使ってもほとんど改善効果が見られません。効果が出ないというだけならまだマシで、症状によってはむしろ悪化してしまう恐れもあるため、イボ改善に馬油を使うときは慎重に行いましょう。
以下に、老人性イボ以外のイボの特徴と、馬油を使用した場合に考えられるケースについてご説明します。
ウイルス性イボ
ウイルス性イボは、その名の通り皮膚がウイルスに感染することで発生するイボです。肌のターンオーバーを整えるだけで治りうる老人性イボと違い、ウイルス性イボは皮膚にウイルスがいる限り治りません。
ウイルス性イボの厄介なところは、素人が下手にいじると増える可能性が高いという点です。かきむしったりちぎったりするとウイルスが飛散し、別の部分にもイボが増えてしまうのです。そのため、ウイルス性イボにかかった場合は下手に触らず、早急に皮膚科で治療してもらうのが一番です。
馬油には抗菌作用があるため、ウイルス性イボに対して効果的だと考える方もいます。たしかに全く効果が無いとは言い切れませんが、しかし現代には馬油よりもよほど効果の高い治療薬があります。
下手に馬油で治療しようとして二次感染を招くよりは、最初から病院で効果の高い処方薬をもらうほうが賢明だといえるでしょう。
関連記事ウイルス性イボができる原因と感染経路や治療法を徹底リサーチ!
懸垂性線維腫
懸垂性線維腫は老人性イボの一種です。ただし、一般的な老人性イボが数ミリ程度の大きさなのに対し、懸垂性線維腫は直径1~2cmにもなる巨大なイボです。
ここまで大きくなってしまうと、肌のターンオーバーを整えたくらいで自然治癒する可能性はほぼ無いと考えてよいでしょう。懸垂性線維腫は、皮膚科で「凍結治療」や「レーザー治療」などを受けて治す必要があります。
馬油を使用することで悪化することはほとんどありませんが、逆に改善することも考えられません。肌を保湿するという観点から見れば懸垂性線維腫に馬油を使うのは悪いことではないものの、効果的とは到底言えません。
馬油に含まれる主な成分
馬油に含まれる成分には、老人性イボの改善に役立つと見られるものがいくつもあります。
ここでは、数ある馬油の優れた成分の中から、特に有用だと考えられている成分の特徴や効果についてご紹介します。
パルミトレイン酸
馬油に含まれる成分の中でも特に重要なのがパルミトレイン酸です。
もともと人間の肌にも含まれている脂肪酸ですが、年齢を重ねるごとにその数は減少していきます。パルミトレイン酸が不足すると肌のターンオーバーは乱れやすくなり、老人性イボなどの肌トラブルの原因となります。
馬油にはパルミトレイン酸が豊富に含まれているため、加齢によって減少したパルミトレイン酸を補給するための手助けをしてくれます。つまり、豊富にパルミトレイン酸を含んだ馬油には「肌のターンオーバー促進効果」が期待できるということなのです。
リノール酸
リノール酸は、皮膚の乾燥や老化を防ぐ役割を持つ脂肪酸です。
皮膚が乾燥していると老人性イボが発生するリスクが高まるため、リノール酸のように乾燥防止効果のある脂肪酸は非常に有効です。
馬油にはもともと高い保湿効果がありますが、リノール酸は馬油の保湿効果を高める一助になっています。日頃のスキンケアで馬油を使い、肌に適切な潤いを与えることは老人性イボの抑制にとても有効です。
オレイン酸
馬油に多く含まれるオレイン酸は、他の脂肪酸に比べても「酸化しにくい」という特徴を持つ脂肪酸です。オレイン酸を肌に吸収させると、肌の内部で「過酸化脂質」の発生を防いでくれます。
過酸化脂質は皮膚の老化の原因になるといわれている厄介者です。
発生した過酸化脂質をいつまでも放っておくと、肌の老化が早まり、若くして老人性イボの発生を招く結果になりかねません。こうしたリスクは、オレイン酸を多く含む馬油を使用することで抑制できる可能性があります。
スキンケアにオススメの馬油
馬油はネットショップや街の薬局などで簡単に手に入ります。医薬品ではないため入手に特別な許可も必要ありませんし、いつでも手軽に始められるのが馬油スキンケアの良いところでもあります。
馬油はいくつかのメーカーから販売されていますが、もともと自然の素材なので効果自体に大きな違いはありません。メーカーによって大きく違うのは「添加物が入っているか否か」ということくらいなので、馬油の選び方はそこまで難しくもないでしょう。
ここでは、初めて馬油を買うという方のために、オススメの馬油を2種類ご紹介しておきます。
薬師堂 ソンバーユ
昭和63年、日本で初めて馬油を化粧品原料として使うことを認可されたのが「薬師堂」というメーカーです。もちろん今でも馬油の製造を続けており、薬師堂の「ソンバーユ」は名実共に、日本で一番有名な馬油と言えるでしょう。
ソンバーユにはいくつかバリエーションがありますが、完全無添加の馬油をお探しなら「ソンバーユ 無香料」がオススメです。薬師堂の独自技術で馬油独特の油臭は除去されていますが、後から添加物を加えるようなことはしておらず、原材料は100%純粋な馬油のみとなっています。
馬油の匂いが苦手だという方には、匂い付きのソンバーユがオススメです。ソンバーユには、バニラの香り・クチナシの香り・ヒノキの香り…など、使いやすくするためにあえて香料を使用しているものがあります。馬油の匂いが苦手だという方にも好評なので、初めての馬油にも向いています。
日本創建 ナチュラル馬油
馬のたてがみの下層部にある上質な油のみを原料としている馬油です。しかも放牧肥育された馬のみを使用しており、馬油としては珍しい「原料」にこだわった商品です。
ナチュラル馬油には、製法にも他社との違いがあります。肌に刺激を与えないよう、ナチュラル馬油の製造過程で馬の油を溶かすための溶剤などは一切使用されません。
人の体温よりも低い温度でじっくり時間をかけて抽出されるため、パルミトレイン酸などの貴重な脂肪酸が壊れずに馬油に入ります。
非常にこだわって作られた馬油なので、刺激が少なく肌に馴染みやすい特徴を持っています。赤ちゃんや男性でも安心して使えるので、ナチュラル馬油なら家族全員のスキンケアをまとめてカバーすることが可能です。
馬油は日頃のスキンケアに使おう
総括すると、馬油は「老人性イボの予防」には大変効果的であることがわかりました。
しかしあくまで医薬品ではないため、「老人性イボの治療」に使えるわけではないということを念頭におきましょう。
結果的に老人性イボを改善してしまう可能性も否定はできませんが、薬ではないので治療目的に使っても即効性はありません。大切なのは、馬油を日頃からスキンケアに活用することです。
即効性こそありませんが、馬油を使い続けることで得られるメリットの蓄積は決して馬鹿にできません。老人性イボに限らず、馬油の効果によって肌全体の質が改善する可能性は充分にあるはずです。
どうしても老人性イボを自宅で取りたいのでしたら、専用のイボケア化粧品を試してみましょう。効果が実感できる化粧品は以下のランキングから探してみましょう。きっとあなたにピッタリな物が見つかますよ。